Perfumeはアイドルなのか問題

 

まずさいしょに

アイドルたちはきっと真剣にアイドルをしています。わたしたちファンも真剣に応援をしています。でも本当は、その対象がアイドルでもアーティストでもモデルでもアスリートでもインフルエンサーでもなんなら身近な友人知人でも、応援したくなるような相手の行動や想いやその他のなにかに心をつかまれている、その事実が重要なのです。相手の肩書がなんであれ「ファン」を名乗るのはそう生き物になるということで、そこに優劣はありません。

わたしはPerfumeハロプロが大好きです。類は友をなんとやらなのか、周りにはいろんなアイドルを好きな人がたくさんいます。でも、ほとんどの場合、好きな対象はどんなに遅くても20代後半には「アイドル」ではなくなります。

当人が望む進路変更であれば、もちろん問題ないのです。私たちファンはその背中を見送り、前を向き歩いているであろう彼女たちの姿に時折思いを馳せるのみです。

外野によるラベル替えに関するもやもや 

Perfumeが22~3歳の頃から、周囲が「Perfumeってもうアイドルじゃなくてアーティストだよね」と言い始めました。

わたしがPerfumeを好きになった頃、彼女たちはまだ10代でした。わたしは成人した社会人で、周囲に「Perfumeっていうアイドルが好きなんです」というと、一様におかしな顔をされたり、半笑いで「変わってるね」と言われたり、ひどい場合には「もっと大人としてまともな趣味を持ったらどうか」なんてことを言われたりもしていました。最悪なのは、個人の性指向に関する揶揄を受けたりしたことです。まあそれはまたちょっと別の問題なんですけど……。とにかく、その都度憤慨したり、落ち込んだりを繰り返したものです。

でも、「Perfumeはもうアイドルではなくアーティストでは」という「ラベル替え」が始まった頃から、そんなことを言う人はいなくなりました。そして、それをポジティブな変化だと、わたしにはおもえませんでした。
※ちなみに、ハロプロを好きだと言うと、いまだに同じような反応が返ってくることがあります。

ほぼ同じような頃、テレビだったかラジオだったか、3人が「まだアイドルと呼んでいただけるなんて」という発言をしていた記憶があります。あまりに衝撃的で、なんというか、打ちのめされました。そのとき3人が使った「アイドル」という言葉には、明確に「もっと年若い女子」を指していました。アイドルを目指して夢を叶え、その一線を駆け抜け戦い続けている彼女たちが、アイドルと呼ばれることに卑屈にならなくてはいけないって、いったいなに?そして「まだアイドルと呼んでいただける」彼女たちは、じゃあアイドルと呼ばれなくなったらなにになるの?アーティスト?でも3人はその変化を望んでいるの???

それは当人たちの意識の問題というより、そういう発言をさせた世間の問題に見えました。

また、Perfumeハロプロに限らず、「自分はこのアイドルを聴くし観るが、でも彼女たちは違う、彼女たちにはこんなアーティスティックな部分がある、だから自分はアイドルを好きなわけではない、アーティストとして好きなのだ」などと語り出す場面にもよく遭遇しました。

いや、いいんです。別に何をどのように好きになっても、それは個人の話の範疇におさまるのなら、わたしも気にならないんです。でももやもやしてしまう。その感覚の根っこにあるものが、個人の話の範疇だけにおさまるとおもえないから。

10年くらいそういったあれこれを見たり聞いたり結果、世間が女性アイドルに対してのラベル替えをしようとするとき、だいたい以下の3パターンに分かれると感じました。(混ざってる場合もたくさんあります)

  • アイドルをアーティストの下位ジョブだと捉えている
  • アイドルはまともな大人が好きになるものではないが、アーティストというラベルであれば応援するにやぶさかでないと考えている
  • 女性アイドルは年若い女性の使う肩書であると定義づけている

この3パターンが世間一般の風潮として存在するという仮定のもとに話を続けます。

ハロプロには「25歳定年説」というのがあります。内実は不明ですが、それくらいの年齢になるとみなキャリアチェンジをするのは事実です。冒頭で「当人が望む進路変更であれば問題ない」と言いましたが、彼女たちが先を考えるとき、社会における「アイドルは下位ジョブ」「女性アイドルは若い女の子がするもの」という風潮が影響しないかといえば、わたしはノーだと思っています。当人たちがそんな考えを持っているわけではなくてもです。「アイドルという肩書きから脱却しなくては、社会人として/芸能人として年齢を重ねていけない」という呪縛のようなものを感じます。

男性アイドルは50近くなってもアイドルなのにね。

Perfumeはアイドルです 

果たしてアイドルはアーティストの下位ジョブなのか?女性アイドルがアイドルであるまま、年齢を重ねてはいけないのか?

そんな感じのことを鬱々と考え込んでいた頃、Perfumeがでている雑誌を買いました。「音楽と人」です。Perfumeを「アイドル」と明確に書いていました。すべての雑誌を追えていないのですが、久しぶりに見かけた気がしました。そして最近の雑誌インタビューでは、3人も自身を「アイドル」と言っていました。
救われた、ように思いました。未来に光が見えたようにも思いました。
Perfumeにも、同じような年齢の呪縛があったことを知っています。「Perfumeを続けることにしました」という15周年ライブのMC。あれは、「続けない選択肢があった」と理解しました。でも続けることにした。その決断にいたるまでどんな葛藤があったのか、わたしたちにはわかりません。
Perfumeは今年から来年にかけて、メンバーが30歳になります。そのことに関係して、これからのライフプランやグループの今後について触れられる機会も増えているように思います。

そんな状況を受けてか、3人は今回のツアーのMCで

3人で歳を重ねるのが楽しい」

「求められる限り続けて行こうと思っている」

と、言ってくれました。 

わたしはファンとして、いついかなるときも3人の覚悟と決断を尊重します。もし今後解散することになったとしても、これまでの時間に感謝こそすれ、「あのときああ言ったじゃないか」なんて言うつもりは当然微塵もありません。(力いっぱい惜しむことはするとおもいます。それはゆるしてほしい)

でも、やっぱり嬉しかった。

外野の勝手なラベリングなんて気にしないで、続けたい人が続けられるだけアイドルを続けていける世の中であってほしい。3人がアイドルであることに誇りを持って前を見据えて進んでいく姿を見て、もっともっと後に続く子が出てきてほしい。そして「アイドルという生き方」を肯定し、尊重し、仕事として成立する世の中になってほしい。そんなふうに考えていた自分を、勝手に肯定されたような気持ちになりました。

本当はね、最初に言ったように、何かのファンであること自体は対象の肩書きとは関係ないんです。呼び方はアイドルでもアーティストでもなんでもいい。でも、ラベリングすることが対象のあり方に影響しそうな場面では、ファンだからこそ、こだわっていたい。

だからわたしは、「Perfumeってもうアーティストでしょ?」っていう人に対しては「Perfumeはアイドルだよ」と、「いい年してアイドルなんて好きなの?」という人には「そうよ、大好きなの!」と、胸を張って答えたいとおもいます。

 

ていう、だらだら話。まとまらなかったけど、まんぞくだ。楽しいことだけ書くブログにしたかったけど、破っちゃった。たまにはいいでしょ。

 

最後にアイナナ第3部から、天くんと姉鷺さんのやりとりを引用します。

「理想のアイドルって、なんだと思いますか?」

「終わらないアイドルよ。夢が終わるところなんて見たくないもの。日本一のトップスターじゃなくたって、顔に傷があったって、声が出なくたって、終わらせないでくれたらそれでいいのよ。だけどその夢を叶えるのが一番難しい」

永遠なんてないってわかってるし、終わらせることも大事なことだって知ってるし、ファンの夢ばかりを背負わず自分の人生も大切にしてほしいとおもっているけど、それでも列挙したような一般的な風潮なんて曖昧なものに「終わりを迫られる」ことだけは、男女関係なくできるだけないといいなあ……と願わずにはいられないわたしなのでした。